at マッサージ 11/25(土) 18時

なんとなく数ヶ月ぶりにアロママッサージ屋の予約をする。家から近いということと安いということでそこそこ気に入っている店だ。
待合室で前に座っているカップルの女性が綺麗だな、と思っていると個室に呼ばれる。


ここのアロマ屋の嫌なところは、マッサージをはじめる前に「プラス2,000円で凝りがほぐれるこのアロマを使えますよ」と売り込んでくるところだ。
これから担当の女性が来て、それを勧め、いつものようにそれを断るのがすごくストレスなので、このあと 2ch のスレにでもいって「あの売り込み何とかならないかな?」と書こうかとも思いつつ足をお湯につけて担当を待つ。
ここは引っ越してから四回は行っている。暗い個室でトランクス一枚になり、施術をする女性が
「ガウン脱いでください」
と言い二人きりになるので独特の緊張感が得られる。夜景の綺麗な汐留あたりのシティーホテルでのセックスはこんな感じだろうか、と2003年の彼女と行った汐留の風景を思い出す。


ボディコース三十分を頼み、部屋に入ると、思わず声を出しそうになる。
あの女性だろうか。一年前に初めてここに来た時に施術をしてくれた小柄で細く、目がタレントメイクの美人女性だ。久しぶりに見てやはりかわいいと思える。
とはいえこちらは近所のマッサージ屋にお洒落して行くわけでもなく、髪はボサボサの状態で、服装はダサダサだ。
いつもこの店が勧めてくるプラス 2,000 円のアロマは勧められなかったので、なんでだろ?と首を傾げたが、少しドキドキしながら言われるがままにうつ伏せに寝る。そしてその子にトランクスというか店が用意したブリーフを半分ズリ下げられ、背中にアロマオイルを塗られてマッサージを受ける。


マッサージが終わり「先に受付でお待ちしています」と部屋を出て行ったので、普段以上に服装の乱れや髪の乱れに気をつけて受付に向かう。
「いかがですか、ほぐれましたか?」
「ええ、大丈夫です」
赤いなんとかハーブティーを飲む。すると意外な質問が飛んでくる。
「ご自宅、近いんですね」
その子に顔を向け、ひょっとして……と聞いてみる。
「あ、そうなんですよ。前も、初めて来た時にやってくれた……?」
「はい」
ようやく気付いたのか、という表情をしてくれたので、こちらも嬉しくなる。
この子はいくつだろう。22才〜26才といった感じか。目の周りのアイラインが他のここのマッサージ屋のスタッフとは違い跳びぬけてかわいいので、忘れようがない顔ではある。
「あの時は、ジンギスカンに行ったんですよね」
そうだったか、そんなことまで話したんだっけと思い、あぁそうかと頷き笑う。よく覚えているものだ。
ひょっとして、気があるのだろうか。


まさか、と打ち消しつつ、「下半身もほぐすこと」「シャワーじゃなくてお風呂にも入ってください」というアドバイスを聞く。
ここでその子の目を見ると、こんな汚い格好をしているのに精一杯施術をしてくれたことが申し訳なく、正視できない。
元々サービス業の女性とは目はあわせないけれど、今から目を合わせるのもなんだな、と思い、時折チラッと見つつ話を聞いた。そしてネームプレートを確認して「Sさん」と記憶する。
「よし…」これで指名ができる。指名制度がなければ、「今日いないならまた今度にします」ぐらいの勢いで制度を作ればいい。
なので最後は「ここは指名はできるんですか?」と聞こうと思ったが、それよりも前にその子がドアを開けるために飛び出してきて
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
とテンプレ発言をしたので、イレギュラーな発言はやめておいた。
そして自分にしては珍しくちゃんと礼をして、店の外で見送っているであろうその子の視線を感じながら帰っていった。この店はちゃんと店の外で客をしばらく送る習慣がある。こっちを見送ってるんだなと思うとこちらも歩くのがぎこちなくなってしまう。


これまでそのマッサージ屋に行くのは数ヶ月に一回、気が向いたときだけだったのだけど、「これからはひと月に二回行こうか」と考えている自分がいておかしい。